アイマスを愛するプロデューサーの皆様および統計沼に沈まれている皆様。
紅木弘です。
データ収集系ではない記事としては,これが2021年最初となります。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
ラブソングという曖昧な言葉
さて,今から約1年前。ちょうどデレ7th大阪公演が終わった後のこと,私の元にとある方からあるご質問をいただきました。
それは,アイマス楽曲にラブソングはどのくらい存在するのか?というものです。
当時の私はちょうどアイマス楽曲の歌詞でテキストマイニングを始めたばかりの時であり,このご質問は大変興味深いものであると同時に,とても難しい問いであると感じました。
なぜなら,ラブソングには定義が存在しないからです。
もちろん,ラブソングというくらいですのでラブ。愛とか恋について歌った曲がラブソングということはできるでしょう。
ですが,その愛や恋にも様々な意味や種類があり,すべての愛や恋について総括した定義について考えることは,はっきり言って私の領分を超える大問題です。
すなわち,ラブソングもまた,全てのラブソングに対して総括した定義など存在しないに等しいと言えます。
そして,定義が存在しない以上,ラブソングかどうかは人の主観に大きく左右されます。
ある楽曲に対して,Aさんはラブソングだと感じても,Bさんはラブソングだと感じないというケースがいくらでも存在するということです。
したがいまして,当時の私は上記の説明をした上で,質問にはお答えできないと回答いたしました。
しかしながら,ラブソングの定義は大変興味深い議題であり,私の中でずっとこれを求める方法を考えてきました。
今回は,この問題に対して私が行いましたことと,その結果。また,結果から得たものについてお話しいたします。
ラブソングの定義を求める方法の考察
機械学習による判別法
ラブソングの定義を考える際,真っ先に思いついたのは,ラブソングの定義を機械学習ブラックボックス化し,ある楽曲に対してラブソングかそうでないかを判別することです。
定義することが困難であるならば,始めから定義しないでまず本来の目的であるラブソングかどうかだけ判別だけするという発想です。
しかしながら,これを実現するためにはラブソングとラブソングじゃない楽曲の教師データが必要となります。
ラブソングについてはカラオケや音楽配信サービスなどでラブソング特集とありますので,これを教師データとして用いればよいと思ったものの,問題はラブソングじゃない楽曲特集などあるはずがないため,ラブソングじゃない曲の教師データを入手することができないことです。
したがって,ラブソングとラブソングじゃない曲を自分で選択肢学習させることとなるため,結局,最初の議題であるラブソングの定義をどうするかという問題に戻ります。
すなわち,この問題を突き詰めていくと,私以外の客観性を持った上で,ラブソングとそうではない楽曲の分離が必要なのです。
よって,この問題は私1人だけでは解決できないという結論に達し,次の方法を考えました。
アンケートによる判別法
ラブソングかどうかの判定に私以外の客観的データが必要であるならば,それを集めればいい。つまり,ある楽曲に対して,これがラブソングだと思うかどうかをたくさんの人に聞けばいい。
このように考えた私は,以下のようなアンケートを作成し,それにご回答いただくことによって,ラブソングかそうでないかの判定を行うこととしました。
作成したアンケートは,デレマス楽曲261曲からランダムに10曲を取り出し,これらの楽曲についてラブソングと思うかどうかを Yes / No の二択で回答してもらう。というシンプルなものです。
実際に作成したアンケートが以下のようになります。集計期間外ですがまだ回答可能ですので,よろしければご回答ください。
集計期間は2020/9/28~2020/10/31の約1ヶ月間。述べ110人の方にご回答いただけました。改めて深くお礼申し上げます。
集計期間終了後,回答いただいたアンケート結果を集計し,以下の3つのグループに分けます。
- ラブソング(上記アンケートでYesと回答した割合が66.7%以上)
- 中間楽曲(上記アンケートでYesと回答した割合が33.4%以上66.6%以下)
- 否ラブソング(上記アンケートでYesと回答した割合が33.3%以下)
このグループは割合を変えることによっていくらでも細かくすることが可能ですが,今回は最初のアプローチとして,回答した人の1/3をラブソングだと思うか思わないかの基準としました。
また,中間楽曲はラブソングともそうでないともとらえることができる,最初に述べたAさんはラブソングだと感じても,Bさんはラブソングだと感じないというケースが多いと考えられる楽曲だと考えられます。
最終的にはこの中間楽曲がラブソングかどうかを判別できるようなチューリングマシンを作成することが目標の1つとなります。
アンケート集計結果の考察
それでは各グループについて見てみましょう。
ラブソング
表1に上記グループのラブソングに属する楽曲を示します。
同表より,ラブソングに属する楽曲は64曲。全体の約24.5%となります。
すなわち,今回のアンケートおよび集計では,デレマス楽曲の4曲に1曲はラブソングであると言えます。
また,表1の内,ラブソング率が100%。すなわち,回答した人全員がラブソングだと答えた楽曲を表2に示します。
同表より,今回のアンケートにおいて,回答した人全員がラブソングだと答えた楽曲は26曲。よって,デレマス楽曲の約10%についてはほぼ間違いなくラブソングだと判断します。
中間楽曲
表3に上記グループの中間楽曲に属する楽曲を示します。
同表より,中間楽曲に属する楽曲は27曲。全体の約10.3%となります。
一方で,このグループを詳しくみてみると,こいかぜやマイ・スイート・ハネムーンといった私の直感的にラブソングに属する楽曲が含まれています。
否ラブソング
表4に上記グループの否ラブソングに属する楽曲を示します。
同表より,否ラブソングに属する楽曲は170曲。全体の約65.1%となります。
すなわち,今回のアンケートおよび集計では,デレマス楽曲の6割以上がラブソングではないという結果となります。
一方で,このグループを詳しくみてみると,中間楽曲と同様,絶対特権主張しますっ!や無重力シャトルといった私の直感的にラブソングに属する楽曲が含まれています。
アンケート結果と自分の直感のズレの原因
私の直感が正しいというつもりは全くありませんが,一部の楽曲について私の直感とは異なるグループに属するものがある理由の1つとして,集計データの少なさは否定できません。
今回のアンケートでは述べ110人に回答いただけましたが,アンケートの方法上,この110人が261曲全てに対して回答したわけではありません。
これは,261曲すべてを回答いただくのは膨大な時間がかかるため,現実的でないと判断したためですが,結果として1つの楽曲に対して3人から10人の回答となりました。
すなわち,1曲あたりの回答数はお世辞にも多くありません。
よって,誤読や誤操作による誤回答の可能性は無視できませんし,これを客観的データと言い切るのはさすがに難しいです。
アンケート回答者数の増加とアンケート方法の見直しは,今後このような検討を行う上での課題となります。
ただし,本記事では行ったアンケートおよびその集計結果に上記の問題があることを理解した上で進めていきます。
ラブソング楽曲の歌詞にある共通点
では,表2に示した,ラブソング率が100%の楽曲について歌詞をテキストマイニングしてみます。
使用するのはおなじみのKH Coderというテキストマイニング用フリーソフトです。
表5に上記楽曲の頻出語を示します。
同表から,「恋」や「好き」,「胸」といったラブソングに用いる単語として直感的に推測されるストレートな単語が頻出していることがわかります。
また,「始まる」と「終わる」。「ありがとう」と「さよなら」といった対語が同じくらいの割合で歌われていることから,恋や愛に対するポジティブな部分とネガティブな部分の両方を等しく歌っていることが推測されます。
図1に該当楽曲の共起ネットワークを示します。
同図より,「恋」と「好き」といったわかりやすい繋がりだけでなく,「恋」が「きっと」「運命」,「恋」を「きっと」「伝える」といった「きっと」というあいまいな恋心を歌詞にしている点は興味深いです。
一方で,否ラブソングについても考察を試みましたが,単語が見事にバラバラであり,考察が困難であったため,これもまた次回の課題とさせていただきます。
まとめ
以上,まとめに入ります。
アイマス楽曲にラブソングはどのくらい存在するかについて検討するために,デレマス楽曲がラブソングかどうかについてアンケートを行い,この結果を集計しました。
これらの結果から,まず,デレマス楽曲261曲を3つのグループに分離すると,
- ラブソング : 64曲 (24.5%)
- 中間楽曲 : 27曲 (10.3%)
- 否ラブソング:170曲 (65.1%)
となり,今回の集計ではデレマス楽曲の約25%がラブソングという結果になりました。
また,ラブソング率100%の楽曲27曲に対して歌詞をテキストマイニングした結果,
- 直感的にラブソングに用いられていると推測されるストレートな単語が頻出している。
- 対語が同じくらいの割合で使用されており,恋愛に対するポジティブとネガティブの両方について歌っていると推測される。
ことがわかりました。
一方で,アンケートの方法や回答者数が十分でないことなど今後の課題も多く浮き彫りしました。
この反省を踏まえまた第2回のアンケートを実施し,より有効なデータを収集したいと考えておりますので,その際はご協力のほどよろしくお願いいたします。
それでは,これにて本記事を締めさせていただきます。
統計の力で,アイマスがもっと好きになる。
紅木弘がお送りしました。