アイマスを愛するプロデューサーの皆様および統計沼に沈まれている皆様。
紅木弘です。
私事ではありますが,本日2023/12/4をもって当ブログ『アイマス統計』は作成されて5年となりました。つまり,私がアイマス統計なる活動を開始して5年が経過したこととなります。
始めた当初は全くの0からのスタートであり,当然認知もされない活動ではありましたが,今ではアイマスライブの現地で名刺交換いただく際に「アイマス統計の人だ」「TLによく流れてきてます」とお言葉をいただくことも増え,継続は力なりという言葉を実感しております。
また,今年はコミックマーケット102にて,プロデューサーの皆様を対象にアイマスに関するアンケートを取らせていたき,その結果をまとめた同人誌『アイマス統計プロデューサー一斉調査結果報告書』を頒布することができました。
当アンケートでは2365人のプロデューサーの皆様にお答えいただき本当に嬉しかったですし,それだけ当企画に対してご興味を持っていただけたということに身が引き締まる思いです。
例え個人の活動とは言え情報を発信するものとして,データを扱っているものとして,それだけの責任があるということを改めて自覚し,これからも私なりのプロデュース活動を行っていきたいと思っております。
また,6年目に向けた今後の活動として,
を予定しております。これらの結果は当ブログでの公開はもちろん,X(旧Twitter)やpixiv,同人誌などでの公開を予定しておりますので,改めて皆様のお力をお借りすること増えるかと思いますが,「また紅木が何かやってるよ」くらいの気持ちで温かく見守っていただき,ご興味持たれましたらご協力いただけますと幸いです。
以上,御礼とご挨拶もそこそこに,当記事の本題に入っていきたいと思います。
きっかけは昔読んだブログの記事が消えていたこと
アイマス,特にデレマスというブランドには各アイドルに格差がある。と言われております。特によく言われるのはCVの有無による格差。
2023/12/1時点でデレマスに登場するアイドル190人の内,CVの付いているアイドルは98人(プラス1名CV内定者あり)とデレマスのサービス開始から12年を迎えた今でも90人以上のアイドルにCVが付いていない現状で,CVの格差がないとは残念ながら言えないでしょう。
一方で,CVがついているアイドルについても楽曲の歌唱数やCV担当声優のライブ出演数といった面で格差があるという意見もあります。
これについても例えば,アイマスのライブに出演した回数が少ないCV担当声優さんがいらっしゃるのは事実なので,それを格差とするのであれば格差だと言えます。
ここで気をつけないといけないのは,何をもって格差だとしているのか。そして,どのくらいの格差があるのか。についてだと私は考えます。
そして,何について格差があるのか。については先ほど述べたとおり度々話題になる内容ですが,どのくらい格差があるのか。についてはほとんど議論されていないように思えます。言わば直感的に格差がある・ないの二元論となっており,これでは建設的な議論をすることは難しいでしょう。
ということで,今回はデレマスに登場する各アイドルの格差がどのくらいあるのかデータ的に検討したい……と思っていたのですが,実はこの検討,私ではない方が2018年の9月前に既に行っている検討だったりします。
しかしながら,その該当記事は既に削除されていること。そして,データが5年前と古い結果であったことから,改めて検討を行わせていただこうと思った次第です。
余談ですが,こういうときインターネットの情報の限界のようなものを感じます。
格差を数値化する方法
ローレンツ曲線とジニ係数
今回,デレマスにおける格差を考える上で,ローレンツ曲線とジニ係数を用いたいと思います。
これらの詳細な説明は調べれば多く出てくると思いますので割愛しますが,ローレンツ曲線とジニ係数は所得格差を測る指標としてよく用いられる指標であり,所得格差を図示(グラフ化)したものがローレンツ曲線,このローレンツ曲線から所得格差を0から1の間の数値で表したものがジニ係数です。
もう少し詳しい内容は実際のグラフや値を示した上で後述します。
何を"富"とするか?
ジニ係数やローレンツ曲線は一般に所得,つまりお金について格差を測る指標として用いられますが,本検討では当然,そのまま所得を用いることはできません。つまり,お金に代わる別の"富"について格差の検討をする必要があります。
アイマスにおいて何を"富"とするか。は非常に難しく,それこそこれだけで議論になるような内容ですが,本検討ではデータの収集のしやすさとCVの有無およびCVが付いているアイドルのみの両方の検討が比較的しやすいことから,「アイマスオリジナル楽曲の歌唱数」を"富"と捉え,これについてローレンツ曲線とジニ係数を導出することで,デレマスにおける格差を検討したいと思います。
「アイマスオリジナル楽曲の歌唱数」とは,アイマスブランド内で発表された,フルサイズで音源化され一般的に入手可能な楽曲における各アイドルの歌唱数。と定義します。
つまり,
- ある楽曲に対し5人組ユニットで歌った場合は5人全員が歌唱数が1増えたと換算する
- カバー曲については本検討では除外する。
- アイマスブランド内でのカバーや他ブランドと合同で歌唱した楽曲については歌唱数が1増えたと換算する
- ソロバージョンやリミックスなどで同じ楽曲を歌唱している場合も歌唱数を1として換算する。
と定義して各アイドルの歌唱数を換算します。
デレマスの歌唱数における格差
デレマスの歌唱数における格差における現状
デレマスの全アイドルを対象としたローレンツ曲線およびジニ係数
図1に,2021/12/1時点での本検討で定義したデレマス各アイドルの歌唱数に対するローレンツ曲線を示します。
同図における直線は均等分布線と呼ばれており,もし格差が存在しないとすれば,ローレンツ曲線はこれと一致します。
そして,格差がある場合はローレンツ曲線は均等分布線から下方に膨らむかたちとなります。
つまり,ローレンツ曲線の膨らみぐらいによって,格差の量が視覚的に認識できる。ということです。
とはいえ,ローレンツ曲線ではあくまで視覚的な情報でしか格差を示せないため,これを用いた係数であるジニ係数を見ていきます。
ジニ係数は均等分布線とローレンツ曲線に挟まれた部分の面積(図1の斜線部)と均等分布線によりつくられる三角形の面積(図1)の比によって表される0から1の間の係数であり,0に近いほど格差が小さく,1に近いほど格差が大きいことを意味します。
では,図1に示した2021/12/1時点でのデレマスの歌唱数に対するジニ係数は0.65と算出されました。
一般に,ジニ係数は0.4が警戒ラインと言われており,この値より大きくなると暴動や社会騒乱が増加すると言われているため,0.65という値の高さがわかります。
本検討からは少し外れますが,グローバルノートというサイトで世界のジニ係数の値が確認できるので,そちらもよろしければご確認ください。
ただし,ジニ係数には税金の徴収や社会福祉などを差し引く前の所得から計算する当初所得ジニ係数と,税金の支払いや社会福祉などによる所得の再分配を行った後の所得から計算する再分配所得ジニ係数の2つがあり,多くの国では再分配所得ジニ係数が用いられております(上記グローバルノートも同様です)。
一方で,本検討では富の再分配は行われていない値なので,当初所得ジニ係数が導出されていることについてはご留意ください。
デレマスのCVがあるアイドルを対象としたローレンツ曲線およびジニ係数
では続いて,デレマスのCVがあるアイドルに限定した場合のローレンツ曲線およびジニ係数を見てみます。
図2に,2021/12/1時点での本検討で定義したデレマス内のCVがついているアイドルに限定に限定した場合の各アイドルの歌唱数に対するローレンツ曲線を示します。
また,同図からジニ係数を導出すると,ジニ係数は0.32と算出されます。
この値が高いか低いかについてはこれだけでは議論できないため,これについては後述の検討で述べます。
ジニ係数の推移
では,デレマスにおけるジニ係数はどのような推移をしていったのかを見ていきます。
図3に2012年から2023年までの本検討で定義した"富"に対するジニ係数の推移を示します。
同図の青線はデレマスの全アイドルを対象としたジニ係数,赤線はCVが追加されたアイドルを対象としたジニ係数です。
同図から分かるように,デレマスの全アイドルを対象としたジニ係数は毎年減少傾向にあること。また,CVが追加されたアイドルを対象としたジニ係数は2015年をピークに減少傾向にあることがわかります。
2015年と言えば,デレマスのアニメが放送された年であり,このアニメでメインとなったアイドルたちに楽曲が集中した結果,ジニ係数が大きくなったと考えられます。
しかしながら,少なくともジニ係数上では,デレマス内の歌唱曲数に対する格差は年々小さくなっている。とこれらの結果からは結論付けられます。
当検討の課題と今後の展望
本検討では「アイマスオリジナル楽曲の歌唱数」を"富"と捉えローレンツ曲線およびジニ係数を導出しましたが,当然ながら"富"はこれだけではありません。
私がとりあえず思いつくものだけでも,
- カバー曲数
- CV担当声優のライブ出演回数
- ゲーム内のSSRカード枚数(限定やイベント上位報酬の枚数)
- コラボ企画での起用回数
など様々な"富"が考えられます。"富"が複数ある以上,これらの"富"それぞれに対して格差の有無を確認することが必要となります。
また,今回はデレマスのみを対象としましたが,格差を比較するためには他のアイマスブランドや他のコンテンツでの格差についても見る必要があります。
例えば,デレマスとは対照的にミリオンは平等とよく言われますが,これは何について平等なのか。そもそもデレマスと比較して本当に平等なのか。についての議論は当然必要です。
この際,ローレンツ曲線およびジニ係数だけでは格差について単純な優劣を比べることはできない場合もあるため,これらの曲線や係数以外の方法を用いた検討も必要となってくるでしょう。
つまり,本検討は本検討だけで済ませてよい内容ではないため,今後も引き続き検討が必要であるということです。
まとめ
以上,まとめに入ります。
アイマスにおける格差。特にデレマスに対する格差について検討するため,「アイマスオリジナル楽曲の歌唱数」を"富"とした場合のローレンツ曲線およびジニ係数を導出しました。
この結果,2023/12/1時点のデレマスの全アイドルを対象とした場合のジニ係数は0.65であり,CVが付いているアイドルのみを対象とした場合のジニ係数は0.32という値が導出されました。
また,2012年から2023年までのジニ係数の推移を見てみると,ジニ係数は年々減少傾向にあり,格差は小さくなっていることがわかりました。
一方で,「アイマスオリジナル楽曲の歌唱数」以外を"富"とした場合のジニ係数や他ブランド他コンテンツを対象とした場合のジニ係数の比較なども,アイマスにおける格差を議論するためには必要であることも示しました。
それでは,これにて本記事を締めさせていただきます。
統計の力で,アイマスがもっと好きになる。
紅木弘がお送りしました。